FUNBEST 「間(ま)を怖がっているうちはいつまで経っても話術は上達しない」という話 | FUNBEST


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活動報告

「間(ま)を怖がっているうちはいつまで経っても話術は上達しない」という話

  • 2016年2月27日
怖がる女性

FUNBEST代表の矢島伸男です。

私は現在、日本即興コメディ協会が主催する「ユーモア・スキル養成講座」の講師をやっています。(どんな講座をやっているかは下記をご参照ください)
第1回~オリエンテーション~
第2回~表現力を鍛える~
第3回~創造的思考力を鍛える~
第4回~コーピング力を鍛える~

「流暢に話すこと=話術」の幻想

受講される方は、だいたいの方が教員ですが、会社員の方もいらっしゃいます。受けられる方は、最初からコミュニケーションに対するモチベーションが高く、とても積極的にワークを受けてくださっています。

「ユーモア・スキル養成講座」では、私が研究した「ユーモア・スキル」の内容についてお伝えし、その理論に基づいたワークを行っています。

その中で様々なワークをさせていただくのですが、私自身、非常に印象深いのは、受講される方の中で、「話術が上手い人」は「流暢な語り口調でよどみなく話ができる人」だと考えている節がある、ということです。

もちろん、それも話術の一つだと思います。しかし、皆さんがお笑い芸人を目指すならまだしも、普段のコミュニケーションで、落語家や漫才師のように流暢にベラベラしゃべられても、ただうっとうしいだけなんじゃないでしょうか(笑)。

そもそも落語家や漫才師には台本がありますし、相当な練習量もあります。一方、我々のコミュニケーションには台本もなければ、練習もありません。練習即「本番」なのがコミュニケーションです。ですから、「言葉巧みに流暢に話す力」とは別に磨くべき話術を見つける必要があるように思います。

「評価されること」への恐怖が発想を狭める

話は少し変わりまして、私が行う講座では、参加者の前でコントを演じたり、発表させたりするワークの時間を多めにとっています。

人前で何かを発表する時の緊張感は、教員の方であれば毎日のように味わっているのかと思いますが、どうもそれとは勝手が違うようで、結構緊張されています(それでも、やはり教員の方は表現する力が高いので、その力でうまく乗り越えられている印象があります)。

僕の推測では、児童・生徒の前での発表には、研究授業や授業参観などの機会を除いて、誰か別の大人から評価されるということがないからだと思います。

一般的な大人は、誰か対等な立場、あるいは上の立場の人が自分の振る舞いを見ていて、それに対して何らかの感情を持たれることに敏感なのだと思います。

実際、学校教育を経て、社会に出ても「評価されること」への怖さがありますよね。私もあります。特に社会人になると、一期一会な方も大勢いらっしゃいますから、「この一発の出会いで自分の人間性がすべて決められてしまう…」みたいな恐怖感にさいなまれることもあると思います。

不思議なもので、これは社会性を身に着ける上で重要な過程だと思うのですが、その一方で、自由に表現しようとか、柔軟に発想しようとか、そういう気持ちがそがれていってしまって、何となく無難なコミュニケーションを取ろうとするのが、俗にいう「大人のはじまり」だったりします。

インプロなどの表現系のワークショップをやると、子どもはとにかく自由な発想で楽しく弾けてくれます。「誰かから評価を受ける」とか「周りにどうみられる」といったことに、それほど敏感ではないからです。

これが思春期を迎えると、異性間や同級生間に対する変な意識が邪魔をして、うまくいかなくなることがあります。

そして成人を迎えたあたりで、今度は「自分のアイデアが誰かに評価される」「こんなこと言うと、誰かに変な風に思われるんじゃないか」という恐怖心でうまくいかなくなります。

そして、そのような感情がネガティブな思考を生起させ、行動の域を制限します。だから思い切った発想や表現がそがれてしまう。心理学では「スキーマ」の領域に近いような説明だと思います。

間(ま)が怖くなるメカニズム

なので、アイデアを出すのにも緊張感があるし、そのアイデアを話すのにも勇気がいる。緊張感はやがて心拍数をあげ、呼吸が浅くなり、早口で息の上がったしゃべり方になります。

実は人間の心拍数としゃべるスピード(テンポ)には相関関係があって、心拍数の早い子どもはテンポが速い笑いを好むのに対し、心拍数の遅い高齢者は、テンポがゆったりとした笑いを好む傾向にある、という研究結果があるそうです。

これを自分に置き換えたとき、緊張によって心拍数が早くなっている人は、おそらくその心拍数に合わせて、テンポ早くしゃべろうとしているはずです。だから何もしゃべっていない、何の音もしない、もっと言えば、何も起こっていない静寂の時間、いわゆる「間(ま)」が怖くなってしまうんです。

この3ステップ(緊張による心拍数の上昇→テンポを速めて話したい(もう早く終わりたいという気持ちも込みで)→間をつめて話したい)によって、緊張する人は、会話や発表の中で間を取らずに話す傾向にあります。

しかし、お分かりのように、間というのは会話や発表の中で非常に重要で、間があるから直後の言葉が印象的に聞こえたり、発表者が口にする言葉に重みが生まれたりするわけです。間を意図的にプレゼンテーションで用いることによって、全体のキーワードを浮かび上がらせることができます。

私の講座の中では、「間を恐れない」「何でもない話題をもったいぶって話す」ためのワークを行います。つまり、話す内容はどうでもよくて、その内容を、さも面白いように人を引き付けて話をすることをトレーニングします。

サーカスのクラウンと名講師の共通点「もったいぶる力」

実はこれ、サーカスのクラウンがよくやることで、クラウンは階段をうまく登る・登らないぐらいのことで、延々15分ぐらいのパフォーマンスをしています。「そんなの5秒で登れよ」というのは野暮な話で、「何でもないこと」を「何でもある」ように見せるのは、とても重要な技術なんです。

これはまさに、「原液をどれだけ限界まで希釈するか」という挑戦なのですが、実は本当に講演のうまい人っていうのは、意外とこの能力がずば抜けていたりします。話術巧みに85分笑いを取り続けて、最後の5分で本当に言いたいことをちょこっとまとめる。そうすると不思議なことに、講演全体を通して「いやぁ、いい話聞いたなぁ」と思っちゃうんですよね。

実際、講演90分間を通して、ずーっと重要なことを話し続けたとしても、大人だってそれで覚えられることはほんのわずかです。詳細をきっちり話してそれほど覚えられないぐらいなら、大枠をばつっと話して、そこだけがっちり印象に残す方が、家に持ち帰った資料を読もうと思いますよね。

このように、後々自分の資料が読まれるであろうことを想定し、あえてプレゼンでは盛り上げることだけに終始し、最後にさらっと資料に繋がる一言でまとめる、という人もいます。

何が言いたいのかというと、間を恐れているとますます自分に余裕がなくなって、表現全体にさらなる強張りを与えてしまうため、どうせなら間を受け入れる、もっと言えば、「何も起きない時間に堂々としている」ことを大事にしたほうがいい、ということです。

以上をお読みいただき、少しでも「ユーモア・スキル」に興味を持たれた方がいらっしゃれば、ぜひとも日本即興コメディ協会主催「ユーモア・スキル養成講座」にお越しいただければと思います。

まとめ

・緊張や不安は「間をつめる」ことでは解消されない
・「間を受け入れる」(間を恐れない)ことで心の余裕が生まれる
・うまく話そうとしないこと。むしろ、何でもない話を堂々とすることが大事。
・大事なことは最後にあっさりと触れる程度でも印象に残る。
・「百を伝えて十受け取られる話」よりも「一を伝えて百知りたくなるような話」をする