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活動報告

ほとんどの人が自覚症状なし!?「アイデア過多症」が招くコミュニケーションの弊害

  • 2016年2月29日
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アイデアを「全部乗せ」しても美味しくはない

FUNBEST代表の矢島伸男です。

私はお笑い芸人「モクレン」として活動しながら、笑いの力で教育を変えたい!という思いで、「ユーモア・スキル養成講座」などの講師をしています。

もちろん、芸人ですので、それなりに笑いを交えて講座を進めていますし、お手本としてネタを少々披露することもあります。そんな中で、よく受講される方に「どうしたらそんなポンポン色んなアイデアが生まれるんですか!?」と訊かれることがあります。

「そりゃぁ…まぁ、芸人なんで」というコメントしかできないんですが(笑)、芸人なんて、(すべての人がとは言いませんが)1日中「何か面白いことはないか」と考えているような人種ですので、プロの棋士が何十手先を見越して様々なパターンの指し方を考えるようなもので、アイデアを生み出すのは苦しくありません。

ただ、一般の方で誤解していただきたくないのは、「アイデアが泉のように湧き出る」イコール「面白い」というわけではない、ということです。どんなにアイデアが多く浮かんでも、具体的な形にしない限り、それらは世間の目を浴びることはないのです。

この世にあるすべての食材が、カレーライスの材料として使えるわけではありませんよね?アイデアは料理でいう材料のようなもので、適材適所だし、相性の悪いアイデアの組み合わせもあります。

思いついたことをすべてネタに落とし込もうとすると、今度は見ている側が「消化不良」を起こします。「え、結局、これ何を見せたいの?」ってなります。

実はこれ、芸人をやり始めた若手がよく陥るミスで、とにかく面白いと思っているアイデアを「全部乗せ」しちゃうんです。当然のことながら、ほとんどウケません。「全部乗せ」していいのはラーメンだけです。

「伝えなきゃ」という気持ちがアイデア過多を招く

何でアイデアを「全部乗せ」したがるのか。理由は単純で、すべて話さないと不安だからです。「あれも伝えなきゃ、これも伝えなきゃ」という気持ちが、コミュニケーションの中で情報量を多くさせてしまいます。

しかし、本人も伝えなくてはいけないものが多すぎて、当然覚えられない。忘れないようにとする気持ちが緊張や不安を招き、伝え方が雑になったり、早口になったりする。こうなると、聞き手は伝え手から何を受け取ったらよいか分からなくなります。ただ伝わるのは、「こいつ必死だなぁ」ってことぐらいです。

このように、伝えたいアイデアだけが膨大で、相手にまったく伝わらない状態を、私は「アイデア過多症」によるコミュニケーション機能不全であると考えています。

芸人の自由な発想に憧れる気持ちも分かりますが、そればかりに目がいって、発想をまとめてスマートに伝える技術(「ユーモア・スキル」における「論理構成力」の領域)がおろそかになってしまっては、何の意味もありません。

コミュニケーションにおける「アイデア過多症」は、私が思うに、ほとんど自覚症状がないような気がします。この症状の人は、聞き手から「…で、何が言いたいの?」と質問されることが多いのですが、その質問をされてようやく、自分の話をまとめる段階に入ります。

相手からすれば、「いや、最初からまとめてくれよ!」と思うわけですが、「何が言いたいの?」と言われた側は、ここで問題が解決したことに満足しちゃって、反省するところには至らず、また同じことを繰り返します。

アイデアを過度に放出しようとすると、しまいには、自分が思っていることをすべて言い切らないと収まらないようになります。そのために、コミュニケーションの最中、少しでも何か思いつこうものなら、相手の話に割り込んで自分の話をし出してしまいます。

こうなると、もう「末期症状」といっても過言ではありません。しだいに、その人から相手は離れていきます。「あ、もうこの人は自分の話をしたいだけなんだ」と思い、対話することを諦めてしまいます。諦めた相手は、「もうあなたとは話したくありません」なんて面と向かっていうことはほとんどないでしょうから、自然と人間関係をフェードアウトさせようとします。こういう経験、皆さんにはありませんか?

「ブレない」コミュニケーションをするために

さて、そろそろこの記事の結論をまとめましょう。要するに、思いつくアイデアは多くても損することはありませんが、それよりも「アイデアをまとめる力」というのが必要だということです。10のアイデアが生まれたら、それをすべて詰め込む必要はないのです。多くても3つぐらいでよいでしょう。1つのアイデアを引き延ばすだけでも十分だと思います。

お笑いのネタを例にすると、「コンビニの店員が90歳のおじいちゃん」という設定のコントをするとして、「店が東京ドーム10個分ある」というボケは、コント上のコンセプトに合わないわけです。いや、「店広すぎだろ!!」というツッコミが入れば全然面白いんです。面白いんですけど、それって「おじいちゃん」の設定と関係ないですよね。それだったら、「店が広すぎるコンビニ」でもう1ネタ作ればいいじゃないですか。

何が言いたいのかというと、見せたいコンセプトが2つ以上になると、コントの設定がよく分からなくなってしまうんですね。これをお笑いの用語では「ブレる」といいます。コントのような世界観を大切にする作品は、「ブレる」ことだけは絶対に避けなくてはいけないと僕は思います。

皆さんも、この記事を見て、「あれ、私アイデア過多症じゃないかしら?」と思ったら、日常のコミュニケーションで、自分が思いついたアイデアをまとめることを意識してください。時には、アイデアを潔く捨てることも重要です。

そして、「このアイデア1つを膨らまして話そう」と決めたならば、それに向けて思いっきり舵を切ることです。他のアイデアに浮気するようなことをせず、1本のアイデアの枝を太くしていくことから始めていきましょう!