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活動報告

大人をハッとさせる子どもの「刺さるつぶやき」に大人はどう向き合うべきか

  • 2017年1月22日
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FUNBESTの矢島です。

ジョークのような本当に起きた笑い話があります。ある中学校で、先生が社会科の勉強にと、国会中継の模様を見せたそうです。その日は与野党の攻防が繰り広げられており、まさに侃侃諤諤の状況だったとか。

中継を見終わったあと、生徒から感想を聞いたところ、前に座っていた女子が、「人が話をしてるのに、静かに聴けない大人がこんなにも多いんだってことが分かりました」と言って、教室に笑いが起こったそうです。教師は何も言うことができませんでした。

本当は国会の様子を通じて、どんな政策を話しているかを見て欲しかったと思いますが、そんなことよりも、子どもは大人のそういうところに目が行きます。それは当然のことです。

普段から子どもは大人の行動をよく見ています。それだけに、自分たちに注意したり守らせたりすることを、大人ができていないことに注目するし、心の中でバカにしているはずです。「これが大人なんだ」と。

このように、子どもは時として、反面教師的な発言で大人をハッとさせ、そしてシニカルな笑いを誘います。

日本笑い学会に数度論文を掲載されている米田恵子氏は、子どものつぶやきについて研究をされています。その中で、子どものつぶやきにおける笑いは、「同音異義語の取り違え」「比喩」「理屈」の3つにまとめられると述べています。

その中の「理屈」をもう少し細かく見ていくと、「子どもの論理」「大人顔負けの論理」「大人の論理(大人と子どもの立場が逆転している例)」の3つがあると米田氏は指摘します。

米田氏が論文で紹介されている事例を引用しながら、それぞれの論理について見ていきましょう。
1.子どもの論理
・髪の毛が、だんだん少なくなってきたよ、とパパが言うのを聞いて、「コープ(生協)で買ってきてあげようか?」(3 歳)
・地球の真ん中にはマグマがあると聞いた翌日、庭を小さなスコップで掘っている。「マグマを見てみようとおもって」(5 歳)
・お父さんが会社の飲み会の説明をしている。「会社のお友達とお楽しみ会なんだよ」と言うと、「何のゲームするの?お菓子は出る?」(5 歳)
これらのつぶやきには、子どもならではの発想や考え方が含まれていて、その様子がとても微笑ましく感じられます。

2.大人顔負けの論理
・最近好きな子ができたよう。「かっこういいということは、パンチやキックをすることではなく、人にやさしくすることだよ」(5 歳)
・「ママのごはん、宇宙にとどくくらいおいしいよ。でも、明日はもっとおいしくしてね」(4 歳)
こういうつぶやきに、大人は「あぁ、この子なりに成長してるのかもなぁ」と思いますよね。これも子どもが言うから微笑ましくあります。

3.大人の論理(大人と子どもの立場が逆転している例)
・運動会の親子ダンスをいやがる母親に、「一緒に踊れば心がつながるよ」(6 歳)
・「雨ばかりでいやだね」と母が言うと、「野菜もお花さんも喜んでいるんだから、お母さんはわがまま言っちゃだめだよ」(6 歳)
こういうつぶやきに、大人はハッとさせられます。別に言い負かされたからとか、子どもに注意されたからとかではなく、子どもも大人と同じでレベルの高い論理的思考をしていて、時に大人を目覚めさせるような発言をします。自分が大人であることを恥じるような気持ちにもなります。

【引用元:米田恵子(2003)「「子どものつぶやき」における笑いについての一考察―朝日新聞「あのね―子どものつぶやき」から―」笑い学研究(10)所収,日本笑い学会,pp.11-19】

3つ目の理屈は、大人を反面教師にしたつぶやき、言い換えるならば、大人がハッとさせられる(反省させられる)つぶやきであることが多いと私は思います。子どもをバカにできないどころか、大人が襟を正す思いで、そのつぶやきに耳を傾けたくなります。

このような笑いに出くわした時、大人はどのように振舞うべきなのでしょうか。こいつは生意気だと腹を立てるのか、何もいえず黙ってしまうのか、ヘラヘラしてやり過ごすのか。正直、私には分かりません。どれも正解だし、正解ではないような気がします。

ただ一つ言えることは、大人らしく振る舞えない、弱い部分を持っている大人もまた「大人」の一面であり、子どもがそれを見て「子どもっぽい」と思うことは当然のことで、それを指摘したくすることも、大人になろうとする子どもの性(さが)なのだということです。

私自身、学校で講演をする機会も増え、子どもの発言にハッとさせられることもありますが、その度に彼らの考えを尊重し、また歓迎していきたいと思います。