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活動報告

下ネタ好き必見!下ネタは人間関係を円滑にする!?~性と笑いに関する論文から~

  • 2015年8月20日
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どうも、モクレンの矢島です。

今日は笑いに関する研究から、一風変わった性と笑い、いわゆる「下ネタ」に関する論文についてご紹介します。

≪論文名≫
諸田亮(2002)「性と笑いに関する一考察」『笑い学研究』第9巻,日本笑い学会,pp.67-73

まず、論文の冒頭にこうあります。

「本研究では、人間にとって生物学的にも、社会学的にも本質的な問題である性と笑いがいかなる関係にあるのか、性的な意味合いを含む笑い、いわゆる下ネタがコミュニケーション場面においていかなる機能を果たすのかに光を当てることにより、人間社会の営みの本質に迫らんとする。同時にそれを実際の治療場面において応用する上での一つの試みである。」(p.68)

何ともアカデミックな興味をそそられます。笑いに関する論文を1000近く見てきていますが、ここまで気持ちよく「下ネタ」について考察してくれる論文はほとんどありません。

諸田さんの論文では、主に笑いの「社会的な機能」について検討されています。つまり、「下ネタ」が社会的にどのような役割を果たすか、ということを、コミュニケーションの観点で考察したということです。

実験の方法は次の通りです。

1.被験者 東北大学の男子学生44名(19~26歳)
2.実験期間 2000年11月15日~12月18日
3.教示の内容 実験群、統制群、各男子22名(11組)ずつを設定し、
・実験群:「下ネタは是か非かについて10分間にわたって論じてください。」
・統制群:「死刑は是か非かについて10分間にわたって論じてください。」と、それぞれに教示を与えた。
4.教示の効果について
・ビデオ撮影を行い、性的な意味合いを含む笑いが10分間に生じた回数をカウント。
5.質問紙 会話終了後、質問紙に回答してもらう。
・質問1「会話を通じて互いの緊張は和らぎましたか?増しましたか?」(7段階)
・質問2「会話を通じて相手との社会的な立場の違い(年齢、職業、等)から生じる心理的な距離が縮まりましたか?遠のきましたか?」(7段階)
・質問3「あなたは性的な意味合いを含んだ笑い(下ネタ)を以下のどの場合で用いますか?」(「おもに同性間」「おもに異性間」「同性・異性で均等」の3選択肢を用いた)

※全体的な実験時間は約15分。
 
実験をしたところ、次のような結果が得られました。

・性的な笑いは緊張の度合いを、統制群よりも有意に和らげた。
・性的な笑いは心理的距離の度合いを、統制群よりも有意に縮めた。

つまり、結果だけでいうと、性的な笑い(下ネタ)は、コミュニケーションにおける緊張を和らげ、さらに親近感を高めたということになります!これに対し、諸田さんは次のように考察しています。

・教示によって生じた笑いは、すべてが快感情による笑いでなく、照れ隠しの笑いや、対人関係の維持的な笑いである可能性もある。
・性的な意味合いを含む笑いを共有した実験群の被験者は、性的な意味合いを含む笑いを共有しなかった統制群の被験者よりも互いに対する緊張の度合いが低く、また、互いの社会的立場の違いから生じる心理的な距離が縮まっている。
・対話者間の心的距離が縮まるためには、「話題の重要度」と「話題の共通度」が高いことが必要である。
・「話題の重要度」とは、両者にとってその話題がどれだけ重要であるか、もしくは秘密性が強いかという事である。本研究では「性」というテーマを取り上げたが、これに限らず、話者間にとって重要度が高い話題を共有する事により互いの心的距離が縮まると思われる。
・「話題の共通度」とは、その話題について両者がどれだけ興味関心を抱いているかということである。一方の話者にとって非常に重要な話題であっても、もう一方の話者にとってまったく興味のない話題であったら、話者間の心的距離はあまり縮まらないであろう。

つまり、下ネタを言い合うことで、両者が「我々は話題としてとても重要で、かつ秘密性が強く、またとても興味関心のあることについて話し合った(共有した)」と思えるようになるということらしいです。

初対面の人に下ネタを振るのは、とても勇気がいるし、普通はしませんよね(笑)。人間関係がだいぶ出来上がっていないと、下ネタを飛ばしあうようなことはしないと思います。

しかし、この論文では、初対面の人であったとしても、相手の懐に飛び込んで下ネタを言い合うことで、心理的な距離が縮まり、コミュニケーションが円滑になる可能性があることを示唆しています。

学校現場を見てみると、子ども同士で下ネタを言い合って仲を深める場合もあるように思います。現に私自身も、学生時代そのような体験をしたことがあります。

また、実際は明るみに出てはいないものの、教師が同性の子どもに対して、下ネタで距離を縮めようとする場合もあるでしょう。子どもが教師と性的な話題でのやりとりを楽しみたい、という興味本位もあるように思います。

しかし、教育現場の性質上、「そのやりとりが教育上よいものか」という点に関しては、否定的な意見が多く挙がりそうな気もします。

また、この論文の問題点として、実験の対象が同性(しかも男性のみ)に限られているため、異性間で同様の結果が得られるかが分かっていません。つまり、異性間での下ネタは、心理的な距離を縮めるかどうかはわからないのです。

ただ、まだ実験をしていないので明確にはいえませんが、異性間で下ネタを共有することは、「セクハラ」の問題もあって望ましい結果は得られないように思います。

いずれにせよ、同性間での「下ネタ」の共有は、相手との距離を縮めるいいツールになる可能性はあります。ただ、同性でも下ネタが嫌いな方はいらっしゃいますので、ケースバイケースで、うまく「下ネタ」を使いこなしたいものですね(笑)